hERGチャネルは心臓安全性評価において重要な役割を果たしています。メディフォードは、新しいICH S7BガイドラインQ&Asに基づいた、ベストプラクティスhERG試験(GLP適用)を実施します。パッチクランプに熟練したスタッフが、高品質なデータを迅速にご提供します。
細胞の電気的活動を計測する技術であるパッチクランプ法は、基礎研究だけでなく創薬の分野でも汎用されています。メディフォードでは、精度の高いマニュアルパッチクランプ法と心筋イオンチャネル発現細胞を用いて、主に薬剤の心臓イオンチャネルに対する評価試験サービスを提供しています。スクリーニングからGLPまで幅広い実施基準に対応した評価が可能です。ご希望に沿ってカスタマイズした測定条件下での試験実施ならびにアッセイ系構築にも対応します。
メディフォードは常に、パッチクランプ受託試験サービスの質の向上に努め、ご要望に寄り添ったサービスを徹底します。どうぞお気軽にお問い合わせください。
メディフォードは、2002年に国内で初めてGLP準拠のhERG試験を開始した受託試験施設です。心血管系in vitro試験の中で特に重要なhERG試験はヒト初回投与前に行う安全性薬理コアバッテリー試験です。メディフォードのGLP hERG試験の実施件数はこれまでに300件を超え、国内有数のGLP hERG試験施設として長くご愛顧を受けてきました。ICH S7BガイドラインQ&Asの公表を受けて、2024年1月にベストプラクティスhERG試験の受託試験サービス(GLP適用)を開始しました。CiPAの概念に基づく催不整脈性リスク評価の観点から、hERGチャネルのみに依存した評価から、Naチャネル(Nav1.5)およびCaチャネル(Cav1.2)を加えたマルチチャネル評価とin silico催不整脈モデルを組み合わせたリスク予測への取り組みもグローバルに進んでおり、安全性薬理試験におけるパッチクランプ法を用いたイオンチャネル評価は多様化しています。メディフォードはNav1.5およびCav1.2のベストプラクティス試験体制の整備にも鋭意取り組んでいます。
熟練したスタッフが効率的に測定を実施し、マニュアルパッチクランプの低スループットを払拭する最速の結果報告を実現します。20年以上にわたる受託試験業務で培われた、パッチクランプおよび細胞培養の確かなノウハウにより、薬剤およびイオンチャネルの特性に基づいた最適な試験デザインをご提案します。
メディフォードの最大の強みは細やかな対応力です。パッチクランプ技術に関する深い見識およびガイドラインに関する深い理解を兼ね備えた、経験豊富な試験責任者がどのようなご要望にも丁寧かつ迅速に対応します。予測できない状況にも柔軟に対処し、ご納得いただけるよう試験を遂行します。薬効薬理試験および新規試験の立ち上げ検討にも遠慮なくご相談ください。
3化合物
2濃度累積(5分間/各濃度)
N=2/化合物(計6細胞データ)
溶解性検討 | 1~2日(必要に応じて) | |
---|---|---|
試験計画書作成 | ||
試験実施 | 測定 | 1日 |
速報 | 試験開始から2週間程度(測定終了から1週間程度) | |
草案 | 試験開始から1か月程度(要約および帳票のみ) |
媒体、被験物質(3濃度)、陽性対照
N=5/群(計25細胞データ)
溶解性検討 | 0.5日(分析バリデーション時に実施) | |
---|---|---|
試験計画書作成 | ||
試験実施 | 測定 | 1~2週間 |
速報 | 試験開始から1か月程度(測定終了から2週間程度) | |
草案 | 試験開始から2~2.5か月(測定終了から1~1.5か月) | |
最終報告書 | 試験開始から3~3.5か月(測定終了から2~2.5か月) |
媒体、被験物質(3濃度)、陽性対照(4濃度、2濃度累積)
N=4/群(計24細胞データ)
溶解性検討 | 0.5日(分析バリデーション時に実施) | |
---|---|---|
試験計画書作成 | ||
試験実施 | 測定 | 3~4週間 |
速報 | 試験開始から1.5か月程度(測定終了から2週間程度) | |
草案 | 試験開始から2.5~3か月(測定終了から1.5~2か月) | |
最終報告書 | 試験開始から3.5~4か月(測定終了から2.5~3か月) |
安全性薬理試験は、被験物質の生理機能に対する潜在的に望ましくない薬力学的作用を検討する試験と定義されています。その中でも生命維持に重要な影響を及ぼす「心血管系」、「中枢神経系」および「呼吸器系」における薬剤の有害作用を検討するための試験はコアバッテリー試験と呼ばれ、GLP適用下で臨床試験に入る前に実施する必要があります。
Erwin NeherとBert Sakmannにより開発された電気生理学的手法の一種(1991年、ノーベル生理学・医学賞を受賞)。緩衝液を充填したガラスピペット電極と生体膜の間で1GΩ以上の強固なシール抵抗を達成し、リーク電流を最小限に抑えることによって細胞膜を介した電気活動を計測する方法。細胞膜電位を一定に保ちながらイオン電流を記録する電位固定法(voltage clamp)と、一定の電流を細胞に与えながら細胞の膜電位を記録する電流固定法(current clamp)があります。細胞の電気的な特性を詳細に調べるための研究に汎用されています。
hERGチャネルは、カリウムイオンに選択的な透過性を示すイオンチャネルで、心筋細胞の活動電位を再分極させる重要な役割を担っています(図1)。心筋活動電位の再分極遅延によるQT延長は、致死性の多形性心室頻脈(TdP)を誘発するリスクを亢進し得ることが知られています(図2)。このことよりhERG阻害を示す医薬品化合物は安全性の面を考慮し開発のレールから外されることも多く、新薬創出のチャンス喪失が指摘されています。
イオン電流 | イオンチャネル | 生理的役割 |
---|---|---|
INa | Nav1.5 | 0相(オーバーシュート) |
Ito | Kv4.2/4.3 | 1相 |
ICa | Cav1.2 | 2相(プラトー)、収縮 |
IKr | hERG | 3相(再分極) |
IKs | KvLQT1/minK | 3相(再分極) |
IK1 | Kir2.1 | 4相(静止膜電位)、弛緩 |
安全性にかかわる非臨床試験の信頼性を確保するための実施基準。
被験物質が心室再分極を遅延させる可能性を評価するための非臨床試験の進め方について述べた指針。2022年に、当該ガイドラインQ&Asおよびトレーニングマテリアルズが採択されました。
ICH S7BガイドラインQ&As 2.1項において、hERGチャネルを含むパッチクランプ試験方法のベストプラクティス推奨事項が示されました。これまで、各試験施設は独自の方法でhERG試験を実施してきましたが、ベストプラクティスにより実施方法が調和されることで施設間差軽減が期待されます。ベストプラクティスに基づいた非臨床試験成績は、臨床所見と併せて統合的リスク評価に利用されます。
hERGチャネルを含む複数種の心筋イオンチャネル評価、その結果を活用したin silico催不整脈モデルのシミュレーションおよびヒトiPS細胞由来心筋細胞の評価を組み合わせることで、薬剤の催不整脈リスクをより正確に予測する革新的な概念。催不整脈性に基づいた概念であり、心室再分極遅延、すなわちQT延長に焦点を当てた従来の方法(S7B)に代わるパラダイムとして期待されています。
心筋細胞の電気的興奮、すなわち活動電位形成は、種々のイオンチャネルの開閉によって引き起こされます(図1)。なかでもhERGチャネルは、心筋活動電位を終了し再分極させる重要な役割を担っています。医薬品によって著しいhERG阻害が生じると、心筋活動電位の拡張、心電図におけるQT間隔延長を誘発し、致死性の多形性心室頻脈(Torsades de Pointes, TdP)のリスクが増大することから医薬品開発の主要な懸念事項となっています(図2)。各種心筋イオンチャネルを導入したHEK293細胞を用いたパッチクランプ法は、薬剤が特定のイオンチャネルに及ぼす影響を評価します。単回あるいは累積適用により薬剤のイオンチャネルへの影響を評価します。パッチクランプ法のゴールドスタンダードであるマニュアルパッチクランプ(図3)を用いた精度の高いイオンチャネル評価をご提供します。
イオン電流 | イオンチャネル | 生理的役割 |
---|---|---|
INa | Nav1.5 | 0相(オーバーシュート) |
Ito | Kv4.2/4.3 | 1相 |
ICa | Cav1.2 | 2相(プラトー)、収縮 |
IKr | hERG | 3相(再分極) |
IKs | KvLQT1/minK | 3相(再分極) |
IK1 | Kir2.1 | 4相(静止膜電位)、弛緩 |
従来のICH S7Bガイドラインに基づいて実施するhERG試験。
項目 | 条件 |
---|---|
測定プラットフォーム | マニュアルパッチクランプ法 |
試験系 | hERG発現HEK293細胞 |
試験基準 |
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測定条件 |
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陽性対照 | E-4031(1濃度) |
媒体 |
|
各濃度ごとのデータ取得数 | 5例以上 |
標準的な試験ボリューム | 媒体、被験物質(3または4濃度)、陽性対照;総計25または30細胞 |
データ解析 |
|
ICH S7BガイドラインQ&As 2.1項および関連ドキュメント(トレーニングマテリアルズおよびFDAベストプラクティスガイダンス)に準拠したGLP hERG試験サービスをご提供します。メディフォードでは、統合的リスク評価により、TQT試験回避、動物を使った代替TQT試験を想定した薬剤については、臨床開発後期段階でのGLP hERG試験の繰り返しを防ぐためにもヒト初回投与試験前にベストプラクティス下でのGLP hERG試験の実施をお薦めしています。
項目 | 条件 |
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測定プラットフォーム | マニュアルパッチクランプ法 |
試験系 | hERG発現HEK293細胞 |
試験基準 |
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測定条件 | FDA推奨のベストプラクティスガイダンス(2021年7月30日公表)
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3薬剤の基準薬 (下線は陽性対照) |
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媒体 |
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各濃度ごとのデータ取得数 | 4例以上 |
標準的な試験ボリューム | 媒体、被験物質(3または4濃度)、陽性対照(4濃度,2濃度累積);総計25または30細胞 |
データ解析 |
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GLP試験では陽性対照として使用します。
【hERG電流波形および測定パラメータの経時変化】
【濃度反応曲線】
【hERG電流波形および測定パラメータの経時変化】
【濃度反応曲線】
【hERG電流波形および測定パラメータの経時変化】
【濃度反応曲線】
hERG Safety Margin and Pooled Safety Margin Defined by Reference Drugs |
ICH S7B Q&As Training Materials |
||||
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Reference Drugs | Critical Concentration (ng/mL) |
Protein Binding (%) | Mol wt (g/mol) |
IC50 Distribution (µM) |
Safety Margin |
Moxifloxacin | 1866 (1591, 2188) | 40 (37, 43) | 401 | 62 (38, 104) N=10 |
23x (13, 39) |
Ondansetron | 249 (152, 412) | 73 (71, 76) | 293 | 1.4 (0.8, 2.6) N=4 |
10x (4, 27) |
Dofetilide | 0.37 (0.24, 0.55) | 64 (62, 66) | 442 | 0.01 (< 0.01, 0.02) N=4 |
44x (16, 117) |
Pooled Safety Margin for Reference Drugs | 22x (9, 51) | ||||
Threshold | >51x |
hERG Safety Margin and Pooled Safety Margin Defined by Reference Drugs |
Mediford Corporation | ||||
---|---|---|---|---|---|
Reference Drugs | Critical Concentration (ng/mL) |
Protein Binding (%) | Mol wt (g/mol) |
IC50 Distribution (µM) |
Safety Margin |
Moxifloxacin | 1866 (1591, 2188) | 40 (37, 43) | 401 | 69.6 (63.0, 76.8) N=1 |
25x (20, 30) |
Ondansetron | 249 (152, 412) | 73 (71, 76) | 293 | 1.10 (1.04, 1.17) N=1 |
5x (3, 8) |
Dofetilide | 0.37 (0.24, 0.55) | 64 (62, 66) | 442 | 0.0117 (0.0099, 0.0138) N=1 |
39x (25, 60) |
Pooled Safety Margin for Reference Drugs | 17x (4, 68) | ||||
Threshold | >68x |
※ 2024年5月時点
参考論文:
Derek Leishman et al. Supporting an integrated QTc risk assessment using the hERG margin distributions for three positive control agents derived from multiple laboratories and on multiple occasions, Journal of Pharmacological and Toxicological Methods, available online, June 6, 2024
薬剤開発においてhERG阻害を重要視するあまり、有用な薬剤が開発のレールから除外されていることの問題が指摘されています。Nav1.5およびCav1.2阻害は、hERG阻害の影響を相殺するため、致死性の多形性頻脈(TdP)誘発リスクを軽減することが報告されています。このように、心電図QT間隔延長に伴うTdP誘発リスク(図2)を予想するためには、hERG阻害のみの評価では不十分であり、Nav1.5およびCav1.2評価の重要性が高まってきています。またNav1.5およびCav1.2のデータは、in silicoモデルを用いた催不整脈リスク予測への有効な利用が期待されています。メディフォードでは、ICH S7BガイドラインQ&As 2.1項および関連ドキュメント(トレーニングマテリアルズおよびFDAによるベストプラクティスガイダンス)に基づき、Nav1.5およびCav1.2のベストプラクティス試験の起ち上げに鋭意取り組んでいます。
QTc 延長 リスク分類 |
hERG試験 | In vivo QT試験 |
パッチクランプの追加試験 | その他の追加試験 |
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低 | 陰性 | 陰性 | ||
中 | 陰性 | 陽性 |
CiPA
|
CiPA
|
中 | 陽性 | 陰性 |
|
|
高 | 陽性 | 陽性 | CiPA
|
CiPA
|
マルチ電極アレイ細胞外電位計測系およびヒトiPS細胞由来心筋細胞(hiPS-CM)を用いた機能評価および薬効評価の受託試験サービスをご提供します。ヒト心電図のQT間隔に相当するFPD(Field potential duration)の延長、致死性不整脈のサロゲートマーカーであるEAD(早期後脱分極)の発生を指標として、被験物質の催不整脈リスクを評価します。マルチチャネル評価による催不整脈予測の確認としても有用です。ICH S7BガイドラインQ&Asにおいて、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた催不整脈リスク評価法のベストプラクティスが作成されました。
8ウェルプレート使用例(8検体同時処理)
各ウェル8電極から細胞外電位波形を取得
多点電極の細胞外電位波形を自動解析
(FPD算出、EAD発生を記録)